サルバドール・ヱビ

超現実珍談集

ダリとブルトンの決別

シュルレアリスト・グループをけん引した
サルバドール・ダリアンドレ・ブルトンは、
なぜ決別したのか。
ダリはシュルレアリスト・グループから
なぜ追放されたのか。
その理由の一つとして、
ダリがファシズムからのインスピレーションを
隠すことなく作品に反映したことと言われている。
ダリはヒトラーを描いた作品を残している。
そのことがシュルレアリスト・グループから
反感を買い問題となった。
シュルレアリストの頂点として君臨する
アンドレ・ブルトンはそれを認めることで
世間から反感を買い世界的ムーブメントになった
シュルレアリスム運動を
潰すわけにいかなかっただろうし、
それを問題とする気持ちも分かる。
しかし、シュルレアリスム
「美学上ないし道徳上のどんな気づかいからも
はなれた思考の書きとり」と定義づけた以上、
ダリの方法論はシュルレアリスムとして
間違っているとも言えない。
ダリへの審判として招集された会議では
ダリは何度もひざまずいてその表現行為は
非政治的な性格のものであると主張したそうだ。
しかしそれは認められることはなかった。
シュルレアリストとは、つまり私のことだ」と
ダリが言い切るのは
こういった経緯があったからであるようだ。
ダリの主張を断固はねつけ最期まで
シュルレアリスムの頂点として君臨したブルトン
シュルレアリスムを真面目に実践し、
その主張を曲げなかったダリ。
どちらも一流の芸術家であり、
それぞれ自分の筋を通した。
決別は不可避であったように感じる。