サルバドール・ヱビ

超現実珍談集

覇権についての議論

洞窟の中を船で進んでいくと
コウモリが宴会中であった。
コウモリは思いのほか高尚な悩みを
抱えているらしく次の覇権を取る
生物について議論しているらしい。
朽ちていくニンゲンがつくった
ロボは海底に沈み
目だけがまだ赤く光っている。
コウモリのニンゲンに対する高い評価は
音を奏でることでありそれを再現するために
バットマンズオーケストラの
第一回公演を予定しており
洞窟の中は荘厳な響きが鳴り響くことになる。
そうこうする中で鳥は飛びながら
まさに俯瞰を極めることで覇権のうごめきを
観察している真っ只中である。
議論よりも観察。
観察よりも議論。
ニンゲンはどっちが得意であっただろうか。
その答えを知っているニンゲンはもう
この星にはいないのである。
ロボに埋め込まれたチップには
その謎についてのヒントが残されているが
その再生に関してはニンゲンしか知らない。
まさに答えは足元にあるということだ。
オーケストラの演奏中に洞窟の中で
様々な色鮮やかな鳥達が音に合わせて
舞うその有様はこの世のものとは思えないが
鳥と鳥同士が衝突することで
鳥も海底に沈んでしまうことになる。
混ざり合わないものを無理やり混ぜ合う
典型的な危険性を体現している世界である。
おやおやロボの目が点滅し出した。