サルバドール・ヱビ

超現実珍談集

眼差しと6時間

トーキョーへ。
ある会に参加した。
構想を深化させるために。
会場に6時間拘束の長丁場であった。
最初の4時間は私にはあまり響かなかった。
聞いたことがあることを聞いたからだ。
遠くに見える窓越しの青い空を見たら
不意に涙が出てきそうになった。
ムスメの私に訴えかける眼差しが
目に焼き付いていたからだ。
目は全てを語る。
私は少々錯乱状態になってしまい
この場をやり過ごすことが困難になり
「空を見たら涙が出てくる」と
錯乱気味の電子メッセージを送る。
しかし的確な回答が返ってきた。
五酸化炭素が注入されたのだ。
冷静さを取り戻した私は
残りの2時間を乗り切った。
ちょんまげヘアーが垂れ下がり
目が隠れてしまっても気にせず話し続ける
登壇者は彼なりの真実を訴えていた。
私の本質に共鳴しているのは
ビリー・チャイルディッシュや
ティモシー・フェリスや
サルバドール・ダリであり
根源的なオリジナリティは
その融合に近しいところがある。
やることは決まっている。
オベンキョーしても頭で考えても
構想は深化しない。
余計なことはもうしないと決めた。
やるだけだ。
本日の振り返りと今後についてを
周囲とシェアせよと言うので
私はキッパリこう言った。
「やることが決まっているので
もうここには来ないだろう」と。
皆、驚愕していたが
「成功したら来てくださいよ」と
言うので私は
「そうだな」と言ってその場を去った。
酒と女達の香水の匂いが入り混じる
トーキョーシティーを早足で横切り
私は一旦静寂を取り戻すために
DT Lineへ向かった。