サルバドール・ヱビ

超現実珍談集

ミスターセンクスの斜め後ろに座った美女

サルバドール・ヱビと
ミスターセンクス氏は飛行機に乗った。
センクス氏は前のB席に
私はその後ろのB席に座った。
センクス氏の両隣の席は空いていた。
満席だったのでこれから
彼の両隣に人が来るはずである。
私は美女専門家であるセンクス氏に
こう言った。
「美女が両隣に来るとイイね」と。
そう言うと一人の女性が歩いて来た。
さすがセンクス氏!
今日も魔力が効いていると思い
その女性を横目で見ていると
センクス氏の列を通り越して
女性は私の横に座ったのだった。
不意を突かれた私は危うく
心臓発作を起こすところであった。
冷静さを取り戻すとセンクス氏の
両隣におっさんが座っているという
にわかに信じがたい現実が
目に飛び込んできたのだった笑。
マジマジと見ていないので美女なのか
よくわからないがおっさんが隣に座るより
精神的身体的ダメージが少ないので
私は心の中でセンクスと呟いたのであった。
逆に考えればその女性にとっては隣に
サルバドール・オジが座っているので
精神的身体的ダメージを与えている
可能性があるということは
あまり深く考えないようにしようと思った。
距離とはなんなのだろう?
わずか数センチの距離にこの美女と私は
存在しているが物理的でない観点では
10万キロもの距離が離れている。
男女というものは距離が近づいていく。
最終的にゼロを超えて
その距離はマイナスになる。
マイナスになる時は二つある。
舌を使う時とドッキングする時だ。
そして人類存在の時間軸という距離を
延長させていくのだ。
脳内でMOTTO MOTTOと
思考の暴走が始まったが、
私は同時に並行して
何食わぬ顔をして話題の哲学書
「なぜ世界は存在しないのか」を読む。
世界は存在しないらしい。
着陸と同時に読了したので
私は目の前に座るセンクス氏にその本を
「コレ貸すよ」と言ってポンと渡した。
隣に座る美女が立ち上がった。
唇の色がとてつもなく紅かった。
その色が目に焼き付いてしまったのは
言うても言うまでもない。