サルバドール・ヱビ

超現実珍談集

感電した思い出の偏執狂的解釈

私はガキの頃、感電したことがある。
ぼやけた昼下がりだったか記憶が曖昧だが
とにかく大人は全員眠っていた。
私は1円玉を握りしめていた。
その1円玉をなぜかコンセントの穴に
ホジホジ突っ込んでいたのだ。
なんでそんなことをやったのだろう。
何かに導かれていたのだろうか。
ホジホジホジ。
その時ビリビリビリ!!と体に電流が走った。
すさまじい衝撃であった。
『記憶の固執』の溶けた時計のように
1円玉はぐにゃりと曲がり
真っ黒こげになっていた。
貨幣概念も溶けて焦げることを
すでに暗示していたということだ。
私の腕は完全に麻痺しており
これはヤバイと思い洗面台で腕を冷水で
必死に冷やし続けていたことを覚えている。
思えばあの時、超現実のスイッチが入ったのだ。
現実と超現実のちょうどその境で私は
その後の人生を歩むことになったのだ。
クロスドミナンスでもがき苦しみながら
生命の暴動を謳歌せよと。
ヤードバーズのイケメンボーカル、
キース・レルフはリハーサル中に感電し
あの世に行ってしまった。
ブライアン・ジョーンズばりのイケメンも
感電してあの世に行ってしまう
この残酷な非情の世界で
私はこの世にとどまったのだ。
恐ろしい思い出である。
絶対に絶対に良い子の皆さんは
マネをしないでいただきたい。