サルバドール・ヱビ

超現実珍談集

空飛ぶ回遊魚

目的もないのに追い詰めるから
無理が来てしまうことを後で悟っても
着陸態勢なんかとらないで。
飛行して100年。
着陸する時は胴体そのまま滑らせる。
皮膚は熱いかもしれない。
それよりハートの熱さが勝るのだ。
着陸したらそのまま離陸の滑走路へ。
飛行することが休息であり
私は空飛ぶ回遊魚なのである。
飛行しながら所有する全ての書籍を
バラバラにして地上へ放り投げる。
バラバラになった紙片に書いてある
文字を飛び飛びに読みながら
そのストーリーに涙腺を崩壊させる。
書籍と書籍が繋がって
めくるめくの世界がまた広がって
所詮書籍なんてものはそんなもので
私はより太陽に近い状態にある。
鳥たちが私についてくる。
アイコンタクトで行き先を決める。
空気が地上のように感じられて
そう結局飛行というものも
そんなものなのだ。
我々の勘違いをひっくるめて
マグマの上をぐるぐる回る。
手っ取り早い消去に戸惑いながらも
己の生命の鼓動を感じる限界まで
低空飛行をする。