サルバドール・ヱビ

超現実珍談集

マーロン・ブランディング

マーロン・ブランド演じる
ゴッド・ファーザー、ヴィトー・コルレオーネ。
彼が座っている部屋の茶色のドアを豪快に開けて
一人の男が入ってきた。
ザ・シュルレアリストサルバドール・ダリ
ダリは目をひんむいてヴィトーを凝視する。
ヴィトーもダリを凝視する。
お互い黙ったままだ。
沈黙が続く。
ゴッド・ファーザーと
シュルレアリストの対峙である。
ダリはヴィトーの前にある
ソファーに座った。
その時、茶色のドアはドロドロに溶けて
そこは密室ではなくなった。
部屋全体に広がっていた緊張感は
空気と共に外へ抜けた。
新鮮な空気が入り込んできた。
ダリは考え込む。
ヴィトーの元に猫がやってきて
彼の腕に乗った。
ヴィトーは猫を撫でる。
ダリはそこにあるイーゼルの方へ行き
キャンバスに画を描き始めた。
もちろん描くのはヴィトー・コルレオーネ。
ダリにインスピレーションを与える
サイのイメージと
ヴィトー・コルレオーネが共鳴し始める。
ヴィトーがとてつもないサイに見えてくる。
サイに乗る猫はダリの手によって
違う生命体に変わるだろう。
黙々とダリは画を描く。
ヴィトーは黙ってそれを見ている。
もうすぐ最高の超現実絵画が完成する。
それもこれも天才サルバドール・ダリ
天才マーロン・ブランドだからこそなせる業だ。
マーロン・ブランディングにヤられたのだ。
私は偏執狂的暴力的批判的方法により新たな世界が
切り開かれるのを目の当たりにしたのだ。